2007年5月27日日曜日

Weblogの現在と展望 セマンティックウェブおよびソーシャルネットワーキングの基盤として

Weblog(blog)は既存のマスメディアやジャーナリズムにも大きな影響を与えており、Weblog上での議論が世論に反映するような事例も出始めている。このようにWeblogは社会システムとして定着しつつあると思われる。今回はWeblogをめぐる技術に着目し、これらの開設の中心として、今後のWebの発展の可能性について述べる。

Weblogの定義等

Weblogが始まったのは1998年ごろからであるが、Weblogがまず注目され始めたのは、新しいジャーナリズムとしての側面であったといわれている、Weblogはマスメディアの制約にとらわれずジャーナリストが自ら意見表明を行うことのできる場であった。その後、9.11の同時多発テロ後に一般市民がWeblogを通じて意見の交換、議論を行うようになり、そのことがWeblogの認知度を急速に上げた。今日Weblogはこのような草の根ジャーナリズムのようなコンテンツからいわゆる日記にいたるまで様々なコンテンツを提供するための基盤となっている。最も広義のWeblogとは「日々更新される短いコンテンツの集積とされている。」とされているが、Weblogたる所以はWeblogツールにあると思われる。現在のWeblogの普及においてWeblogツールはなくてはならない存在である。これらのツールが書き手の時間的、心理的コストを下げ、コミュニケーションの形態を変え、結果として爆発的に増えたのである。

Weblogによる動向

すでに、Weblogサイトの数が増加するに伴い、多くの関連サービスが登場している、対象をWeblogサイトに限定した検索エンジンや、引用関係を分析して最新のトピックを提示するものGoogleやAmazon.comのWebサービスと連携するものなどが挙げられる。しかしブログは検索エンジンから評価されやすい構造であるので個人の日記等、大抵あまり有益でない情報が検索エンジン上位に来てしまい情報過多を更に悪化させることにもなった。最近はブログの検索順位を落とすように対応されてきているが。Weblogに関する研究では、分析、計算機科学の方面ではWeblogによって構成される空間が持つ性質をWebグラフの分析手法などを用いて分析した研究やWeblogにおけるトピックスの伝播を抽出する研究、Weblogにおけるトピックスの伝播を抽出する研究、Blogに適したランキングアルゴリズムの研究などがある。また社会学的、心理学的なアプローチもよく採られていて、Weblog作者に対するインタビューに基づくWeblogの分析や内容分析によるWeblogの分析、社会での影響力の分析などがある。

日本におけるWeblogの位置づけ

アメリカではWeblogという概念の中に、日記的コンテンツが含まれるのに対して、基本的に日本では日記の拡張として位置づけられることが多い。

Weblogツールの概要

WeblogツールはWeblogサイトを容易に構築することのできるソフトウェアである。簡単にサイトを構築できる機能が主なのだが、いくつか特徴的な機能も備わっている。

  • トラックバック→Weblogサイト間の逆リンクを生成する機構、普通に張ることのできる順リンクとは逆方向の、相手から自分の側に来訪者を引き込むようなリンクを生成でき、この機能を利用して引用関係を伝うことで議論の流れを時系列的に追うことが可能になる。


  • RSS→サイトの概要をXML形式で記述するためのメタデータフォーマット。プレーンなRSSは表現力に乏しいが、モジュールという形式を用いて他のメタデータフォーマットの語彙を利用することで、タイトル、更新時間などの追加情報が記述できる。RSSを利用することにより、ソフトウェアを用いて複数のサイトから情報を収集し、一覧することが可能になった、これをアグリゲーションと呼ぶ現在ではいくつかのRSSアグリゲーションソフトウェアが提供されている。またRSSに関連するサービスとしてRSS全文検索というものがあり、これは検索対象がRSSのみである検索で、このサービスを利用してRSSアグリゲータにクエリーを登録しておくと、キーワードに合致する最新ニュースやエントリを常にチェックするなどの使用法が可能になる。

セマンティックWebとの関係

Webにおける情報洪水を克服するために、コンテンツに機械可読な意味的タグ(セマンティックタグと称す)を埋め込み、ソフトウェアエージェントによって適切な情報の検索や有効活用を目指す、いわゆるセマンティックWeb技術への期待が高まっている。セマンティックWebを実現する要素技術としてはRDF(Resource Description Framework)やオントロジー記述言語が提案されており、基盤は整いつつある。しかしながら、若干めんどくさい技術であるためこれらの言語がHTMLと同様に普及するかは未知数である。一方でRSS1.0の基礎となるRDFは、セマンティックWebの基本的な要素技術である。RSSを自動生成・配信するWeblogツールは個人用のセマンティックWebのためのプラットフォームになり得ると考えられる。Weblogツールにより一般ユーザも容易にセマンティックタグを付加できるようになることが期待される。

Weblogの今後 Community Webへの展望

今後はGREE,mixiといったソーシャルネットワーキングの時代に入ってくると思われる、というかすでに入っている、これらは現状では単なる集中型人間関係登録システムとなっているが、すでにGoogleはこれらのパーソナルネットワークを新たな検索技術に応用することを表明している。これらのサービス上で得られる情報には限界があるが、個人が持つWeblogとのリンク付けが可能になれば、各個人について更なる情報を得ることができる。Weblogの効用は個人が一定の場所において意見の表明し続けていくことで来訪者からの信頼を得やすいという部分にあるといえる。上記のソーシャルネットワーキング技術と組み合わせることで「何を」検索するといった既存の手法から「誰を」検索するというKnow-Who検索をWeb上のオープンな環境で実現することが可能になる。個人を単位として情報を組織化することにより、これまでは単純にHTMLファイルがリンクで結ばれていたWebの状況から、より情報の粒度がおおきくなり、検索性が高まると思われる。このように、Web上に個人の存在を表明できるようなアーキテクチャを筆者らは「Community Web」と呼んでいる。Community Web上での人々のコミュニケーションやコラボレーションの結果が新たなコンテンツとして表現され、他の人によって共有、編集される、筆者らは、このような活動の上に積みあがる信頼関係がセマンティックWebが目指す「信頼のWeb」の一つの実現方法であると考えている。

参考文献→IPSJ Magazine Vol.45 No.6 June 2004

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